昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
「どうして…」
「それはこっちのセリフだ。こんな夜道にまた一人で歩いてるなんて…危なっかしいんだよ、あんた。」
会ってすぐに、冷たい態度。
昨日となんら変わりはない。
確かに…非があるのは私の方だけど、
「ま、俺が口出す事じゃねぇけどさ。」
「い、いえ…っ」
まともに裕也の顔が見れない。
乃梨子は、裕也を前にすると緊張が身体を支配し、いつものように思ったことが口に出せずにいた。
それがどうゆう感情から来るものなのか、知りもせずに――。
「――乗れよ。」
「え?」
いきなり、車から降りた裕也が助手席のドアを開けた。
「送ってく。」
「え、でも――」
「女の子見捨てて行けっかよ。早く乗れ。他の人の迷惑になる。」
そこまで言われたら、はい、しか言えなかった。
素直に助手席に乗った乃梨子は、少し顔を赤く染めていた。