昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
「あの…」
静かな車内のナカ、まず口を開いたのは、意外にも乃梨子の方だった。
「裕也さんは、おいくつ、ですか?」
「18だけど。」
乃梨子は、ひとつ、裕也に聞きたいことがあったのだ。
「あの、レストランの、バイトは――」
まさしくそれは、バイトの事。
昨日は、レストランで働いていた裕也。
賄い料理までまかされていた裕也が昨日突然にクビになったとは思えない。
それならなぜ、宅配便のバイトなんて――
「ぁあ、あそこは8時までなんだ。」
「――?」
やっぱり、クビになったわけではないらしい。
それなら、どうして?という顔をする乃梨子を見て、裕也は納得がいった。
こんな質問するのは…バイトを掛け持ちするって言葉を知らないんだと悟ったからだ。