昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
『あいつ等もこりねぇよなぁ~!いっつも乃梨子なんかの出待ちなんかしちゃって。』
「…おかげでイイ迷惑ですわ。」
乃梨子“なんか”と言われても、乃梨子は何も言わない。
それを分かっているのは、自分自身だから。
それなのに、どうしてこうも男共は私に纏わりつくのだろうと、乃梨子は不思議に思っていた。
それが、自分の持つ容姿からだとは、気付きもせずに。
『乃梨子も人が悪いよなぁ~!ラブレターくらい、受け取ってやれよ。』
「やめてください!…私は、男という生き物が嫌いなんですのよ?」
『・・・。』
そう。
乃梨子の唯一の欠点。
それは、乃梨子が男嫌いであるという事。
男に触れられただけで、全身に鳥肌がたつほどに、乃梨子は男というモノに対して拒否反応を示すのだ。
『…絶対、乃梨子は人生の半分を損してる。』
「はい…?」
沙希の言っている事は、今の乃梨子にはまだ分からなかった。
なぜなら、乃梨子はこの時、恋というモノをしていなかったから。
でも、運命は巡りだしたのだ。
乃梨子の何かを変えるための、何かを――。