昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
運命は突然に。
武道派男子はいかが?
『――乃梨子!飯、行こうぜ!』
終礼が終わるのとほぼ同時に、乃梨子の教室に沙希がやって来た。
「沙希、飯、ではなく、お食事です。それに、まだ4時30分ですのよ?お食事の時間ではございません。」
『なに、アタシの執事みたいな事言ってんだよ~!?とにかく、行こうぜ!』
「申し訳ありませんが、これから私、御茶会ですの。なので、早急に帰らないと――。」
今日は、乃梨子の父・泰蔵の友人を招いてのお茶会。
泰蔵の友人と言えば、大物著名人ばかり。
そこに娘である乃梨子が出席しないという事にはいかないのである。
『ふーん…相変わらず大変だな。乃梨子んとこは。』
「普通ですわ。では…また明日。ごきげんよう。」
『じゃーなー!』
優雅に去っていく乃梨子を見ながら、沙希は頬をかく。
『乃梨子の口調…むず痒いんだよなぁ~。』
――と、つぶやいていた。