日常化した座敷わらし
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〔台風が北海道に直撃します。
外には出ないようにしましょう…〕
テレビで無機質な声が聞こえる
外は大荒れだ。
母「あら~。これじゃあ、洗濯物乾かないわねぇ。」
『………』
母「ほら、真流もぼーっとしてないで手伝ってよ」
『……』
母「ちょっと真流!!」
―――ドタドタドタッ
父「母さん!!真流!!」
母「どうしたの?そんな血相かえて…」
父「大変だ!!お義父さんの様態が…!!」
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医者「……手は尽くしましたが…、それなりの覚悟が必要でしょう。」
姉「お爺ちゃん…!!」
母「そんなっ…!!」
『……っ』
弟「ちょ、真流何処いくの…真流!!」
真流は病院を飛び出した
『はっ…はっ…はっ…』
最近全く使わなかった筋肉をフル起動させる
『…っはっ……はっ…っっ…』
…その足は海へと向かっていた。
寒さや雨風の抵抗で上手く走れない
只でさえ運動音痴の真流は何度もつまずく
『……くぅっ……っ…はっ…』
横っ腹に痛みを感じる
――ズサァァァ
『いっ……』
派手に転んだが、間髪入れず立ち上がり、また走り出す
走り出した足はガクガクと膝が笑っている
お世辞にも走っていると言える速度ではないが、根性で足を進めてゆく
そしてなんとか海に着いた。
海は大荒れだったが、構いもせず砂浜へ駆ける
真流は足元の砂を手で掘り出した
極寒の台風の中走った故に息切れも止まらない
『……っは…どこっ』
髪も服もビショビショで重くなり、動きにくい
膝を着いて一心不乱に砂を掻き分ける
『……っどこぉ?』
この広い海岸で、場所も、どんな見た目かも分からないものを探すのには無理があった
それでも、がむしゃらに辺りを堀続ける
容赦なく降り注ぐ雨で体も冷えきっている
『…いっ…たっ』
掘りすぎて、指先から血が滲み、痛みが走る
寒い中でかじかんでいるせいもあり、思うように指に力が入らない
『うっ…お願い…見付かって…』
最早掘っていると言うより、数粒掻き分けている状況である
雨風で無茶苦茶な髪も気にならない
涙か鼻水か雨か分からないほどぐしゃぐしゃな顔で必死に手を動かす
服も靴も泥々である
真流は半泣きヤケクソで地面を力一杯叩いた
『…もぅっ、神様でもなんでもいいから助けろこの野郎ぉぉぉぉおおおおお!!』
座「なにやってんだ」