【フェチSS】
路地裏の小さなライブハウス。

ステージの上で光と歓声を浴びる彼。
スタンドに立てられたマイクを長い指で握りしめ、観客を煽るように、歌い叫ぶ。


そんな彼の歌声に、時折混ざる巻き舌がたまらなく好きだ。

魅惑的?
セクシー?

ううん、そんな言葉じゃ言い表せない。
ぞくりと身体に電気が走るようなこの感覚は。



あの巻き舌のRの音は、あたしの中のメスとしての本能を刺激する。


たかが空気の振動。


それなのに。


あたしの鼓膜を振えさせるそれは、脳には誘惑の信号として届けられる。

自己主張の強いその音が、あたしに彼の舌の感触を思い起こさせるのかもしれない。




暗闇の中で眩しい光を見つめながら。

“そこから降りてきて、早くその舌で、あたしの舌を絡めとって”

そう願ってやまない。


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