八一ト
お弁当を開く私
パンの包み紙を破る恋次
「恋次っていつもパンだね」
「まーな…」
「そんなにパン好きなんだね」
「いや…」
恋次がパンをかじるのを止め
風景の向こう側を見る
その顔はとても切なそうで
1人ぼっちの捨てられた猫みたいで…
「俺には作ってくれる人が
いないから……」
このとき分からなかった
恋次の口に出した言葉が
震えていたこと
……いや
分かっていたかもしえれない
恋次の顔は私が今まで見た事が無い
威嚇していてばかりの
恋次の瞳は素を表してくれたのかもしれない
どこか守ってあげたくて
思わず私は前から恋次を私の
細い頼りにならない腕で
包み込んだ