桃色の蜘蛛、只一つの罪【短篇】
街には営みが幾重にも重なり、様々な音と匂いと色を作る。

早朝の不安は、動き出す街の流れに乗り遅れないように…。

いや、世の中が始まるそのものが不安感を呼ぶのかも知れない。

夕暮れの安堵は、一先ずの休息の合図の色に、ゆっくりと荷物を降ろせるから…。

何事もなく終りに近付く合図の様な物。

眠りから覚める朝の動きの隙間を縫うように、私は家路へと歩いている。


でも私は、思考に優しく語りかけてくる、この街も世の中も信じていない──。

考えるのは……よそう。
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