安息【密フェチ】
安息
 
「──眠れない?」

 背後から甘く囁かれ、温かな体温と優しい腕に包まれる。

 情事のあとの気怠い身体は休息を欲しがっているのに、何故か目が冴えてしまっていた。

「明日は、映画を見て、買い物をして、夜には手料理が食べたいな」

 首筋に擦り寄られて、少し擽ったい。

 何が食べたいのか聞くと、少し黙ってから「カレー」と返ってきた。

 余りにも普通過ぎるリクエストに思わず笑うと、首筋に噛み付かれた。

 そのまま舌を這わされ、背筋が震える。

「普通で良いんだよ」

 低く、密やかに、甘い声が。

 耳朶を食んで、注ぎ込まれる。

「僕の為に作ってくれるなら、何でもいいんだ」

 ぎゅ、と抱き締められると、微かに香水の匂いがした。

 不思議と、気持ちが安らいでいく。

「眠るまで、こうしていてあげる」

 髪を梳いていく指が、心地良い。

 その指が,まるで魔法の様に睡魔を引き寄せてくれる……。

「おやすみ」

 とくとく……、と聞こえる微かな心音。

 静かな、息遣い。

 眠りに誘われ……

 微睡む……

 安息の、一時。
 

fin 
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