sweet's devil
幼馴染みの文香と私は道路を挟んで向かい同士に住んでるから、文香の朝練が無かったり、帰りが遅くなるとき以外は一緒に登下校している。
ちなみに、文香は陸上部。
走ってる姿なんてすっごくカッコイイんだよ。
今日は一緒に帰る約束はしてるけど、シュークリームを作ることは言ってない。
もし失敗したら、あげるわけにはいかないからね。
「うん。材料は足りたね」
余熱したオーブンに出来上がったシュー生地をいれて、その間にカスタードクリームとチョコクリームを作る。
バニラエッセンスの香りがほんのりと家庭科室中に広がって行く。
焼き上がっていく生地とクリームの甘い香りに思わず頬が緩んでしまう。
食べるのも作るのも好き。
だって甘い香りや味に囲まれてると幸せでしょ?
「思ったよりもたくさん出来たな〜……。
まぁ、いっか。
文ちゃんなら全部食べちゃいそう。
部活終わりでお腹すいてるだろうし」
そう呟きながら、焼き上がるまで時間があるから、クリームを少し使って、ビスケットにクリームを挟んだものを何個か作っておいた。
ビスケットは間食用に持ってきていたものだけど、結局今日は食べなかったからね。
「バスケットに入るかな〜」
オーブンの中を覗き込みながら、今朝シュークリームを入れてきたバスケットに今作ってるものが入るのか心配になりながら、私はバスケットを用意しようとした。
けど、カバンを置いた場所にバスケットは無かった。
教室に忘れてきちゃった……。
焼き上がっていく生地とクリームの甘い香りに後ろ髪を引かれる思いになりながらも、私は教室にバスケットを取りに行った。
もちろん、ダッシュでね。