分かんない。
「……はい」
川上はルーズリーフを2つに折ったものを
私に差し出した。
「あ……うん」
男子が手紙なんて
少し女っぽいような気もするけれど、
手紙で書くということは
結構深刻な話なのかもしれない。
手紙を開くと、そこには
結構大きな文字で
こう書かれてあった。
゙実は俺、好きな子がいるんだ…。
相談とか色々してもいいかな?゙
………。
彼氏がいるから胸を痛める事も
ないだろうと思っていた。
驚きのあまり、川上を見ると、
彼はこちらを見ていて、
その顔はほんのり赤っぽかった。
全然悲しくないはずなのに、
何故だか胸が苦しい。
彼氏がいるのに……。
私の事を好きではないというのが
丸出しということに
心を痛めている。
やっぱり私って、
川上の事、本気で好きなんだ。
だけど、きっと大丈夫だ。
田所がいる。
きっと忘れさせてくれる。
「そうなんだ、川上。
誰だかちょっと気になるけど、
頑張って!応援してる」
川上はそれを聞くと微笑み、
私に、坂口先生が
既に来ていることを教えた。
その時に気付いた事だけれど、
私の左隣は、田所だった。
「あれ、田所、そこだったんだ」
「ああ」
1時間目は、数学だった。
初めだからか、とても理解が出来た。
「気を付け、礼」
「ありがとうございました」
隣では川上が、いつものように
独り言を呟く。その後で、
私と川上はその授業の話をする。
「あー数学むずい〜、
かんざ……」
だけど……。
「なあ、神埼!
俺さ、数学のここ、
よく理解出来なかったんだけど、
神埼は分かったか?
分かったなら俺に教えてくれない?」
なんと分かりやすいのだろうか。
だけど、川上と話をさせたくない
という田所の気持ちは
すぐに察することが出来た。
川上には悪いけれど、
川上を忘れるためだと
自分に言い聞かせて、
私はその10分休みは、
田所と話をしていた。
その間、川上はどうしていたかというと、
私と話せなかった苛立ちからか、
異様なオーラを発し、
廊下へ出ていっていた。