分かんない。
君がいない日々
泣き止んだのは9時半頃だった。
携帯の存在を忘れ、玄関の鍵を開けて、
私は風呂に入った後、
泣きつかれたせいか、
深い眠りに落ちた。
「さっ、美佐!!
起きなさい!遅刻するわよ!」
「えっ!?」
時計を見ると8時になっていた。
この距離から20分では、
走らないと学校に間に合わないだろう。
急いで支度をして、
ペース配分を考えつつ登校していると。
「おせぇよ」
昨日別れた場所で、田所は
自転車にまたがって私を待っていた。
「えっ、あっ、おはよう?
ってなんで田所が……」
「ばーか。昨日のお前の
あの涙声を聞いて、
一緒に行かねえ冷てえ彼氏が
どこにいんだよ。
ほら、いくぞ。またがれ」
後ろに乗れと言わんばかりに
私が座るべき場所を
ぽんぽんと叩く。
気を遣ってくれているのか、
痛くならないようにと
座布団が敷かれてあった。
私はうん、と言うと
田所の後ろにまたがった。
「………腹」
「はら?」
「ちゃんと俺に抱きついてねえと
振り落とされるぞっつってんの!」
照れ臭そうに彼は言う。
クラスの噂通り、
やっぱり田所は優しい。
だけどここまでの優しさは、
私専用だと思う。
そう思うと、鼓動が
とくんとくんと、
静かに速まっていった。
下り坂が多かったせいか、
5分程度で学校についた。
もうギリギリの時間なので、
先生がこちらを見る事もないだろう。
少し学校からと降りすぎた所に
駐輪場があったので、
田所は自転車の鍵をとり、
よし、いくぞ!と私の手をとって
走り出した。
それがとても心地よく感じたのは、
田所のいっていた通り、
惚れさせられかけているのだろうか。
教室に入ると、私の席の隣には
川上の姿があった。
あれからまた悩んだらしく、
目の下に隈があった。
隈が出来るほど、
何を悩んでいるのだろうか。
川上はふと目を私に向け、
私の存在を確認すると、
ポケットからルーズリーフを出し、
私に差し出した。
彼は無表情で、何も言わなかった。