分かんない。



夏休みの最初の日は、
勿論圭祐とデートだった。
愚かな事に、2人で何をするか
全く考えていなかった。
その日は結局圭祐の家へ行き、
TVを見て楽しんだり、
他愛のない会話を楽しんだり
ゲームをしたりした。

デートを何回か重ねたある日。
今日は川上と川上のお兄さん達と、
夏祭りへ行く約束だ。
下半身の丈が短い浴衣に着替え、
いつもとは違う豪華なヘアスタイルにした。
って、私どうして相手が川上なのに
こんな事してるんだろ。
まあしちゃったし、もういっかな。
もうすぐ私の家の前に
川上達の車が来る頃だ。
何度か車が通りすぎると、
黒い軽車が私の目の前で止まった。
助手席の窓が開き、
可愛い女の人が顔を出した。

「あれ、可愛い子。
克哉くん、この子本当にお友達?」

後ろの窓が開くと、
そこから川上の顔が出てきた。
どうやらこの窓は外からだと
見えにくいあの窓らしい。

「……え」

川上の頬が急激に赤く染まった。
私も恥ずかしくて目を逸らしてしまった。

「ええ、まじで?サナ、ちょっとどいて!」

サナさんと呼ばれた彼女は、
川上の兄さんが私を見やすいように
移動すると、川上の兄さんが
思いきり身を乗り出してきた。
そして下から上へとざっと見られる。

「まじだ、可愛いー」

サナさんは共感してもらえたからか
テンションが上がっている。

「でしょでしょ〜!」

「でもサナの方が俺好きだよ」

サナさんは黙りこくり、顔を赤らめていた。
それはそうだ。それに
兄さんも私にも気を使ってくれたのか、
サナさんの方が可愛い、
とは言わなかった。

「あ、美佐ちゃん、ドアそっちね。
克哉、ドア開けてやれよー。
レディには気を遣うもんだぞ」

そう言われると川上は
私が乗る方のドアを開けてくれた。
というか川上と同じ後ろの席だった。
お邪魔しますと言って、
車に乗り込んだ。



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