分かんない。
「あのさ……
今朝はごめん。
苛々しててさ……」
柏木は反省する表情を浮かべ、
私の目を見つめた。
「うん、いいよいいよ。
誰だってそういうときはあるしな」
なんだか自分ではないみたいだ。
「ありがとなぁ」
柏木は元いた友達のところへ戻る。
「え、今朝なんかあったの?」
目が…川上を見ている……。
「いや、ちょっとな」
私は軽く笑い飛ばした。
やがてチャイムが鳴り、
またね、と私達は
各教室へと戻った。
自分の席に座ると、
その隣には
いないはずの人物が座っていた。
「あれ………?」
「………あ。今朝の」
川上と呼ばれた男子だった。
「なんで?柏木くんと
同じクラスなんじゃねえの?」
「ああ、あれか。ははは。
恥ずかしい事に、
あいつのクラスにずっといたから
自分のクラスとごっちゃになったんだ。
多分柏木も、俺が来るから
同じクラスって
間違えたんだと思う。
俺、川上克哉。宜しくな!」
川上は照れ臭そうに
自分の名前を名乗った。
「私は神埼美佐。宜しく」
私は笑顔でそう返した。
どうしてか、私の鼓動が速い。
胸に手を当てずとも分かるほど
私の鼓動はとても速かった。
それは、一目見て
どきりとした川上の
存在のせいかもしれない。