分かんない。
あの男
2学期も始まって、
クラスの全員が仲良くなり、
クラスもまとまり始めた頃。
「なあ、神埼、聞いたか?」
今、私の隣の席である
一之瀬甚大(イチノセ シンタ)が
物凄く目を輝かせて
私に話しかけてきていた。
「何の話?」
「それがさぁ、今日
転入生がこのクラスに来るんだって!」
「えっ、本当?今日なの?
でも新しい机無くない?」
私は教室の中を見渡したけれど、
転入生が座るであろう机はない。
「んー。多分数人の男子が、
机運びを手伝うんだと思う」
なるほど、と私は納得する。
今、私の席は真ん中の列の
一番後で、その隣が一之瀬だ。
右と左の他の列は、誰もいない。
真ん中の列だけ飛び出している形だ。
私の計算では、男子なら私の隣、
女子なら一之瀬の隣になるはずだ。
圭祐は左の列の、
前から2番目の席に座っている。
どうして私と圭祐が
離れているかというと、
クラスの皆とも仲良くしてコミュニケーションを
とらないといけないだろうから、と
学校では少し距離を置く事にしたのだ。
川上とは相変わらず離れている。
一番右の3番目の席に座っている。
朝のチャイムが鳴る前の時間に
何故だか坂口先生が早く来た。
どうしたのだろうか、珍しい。
「はい、花畑、山縣、
こっちに来てくれ」
「えっ!?俺ら何かした?」
「いや、違う。
手伝ってほしい事があるだけだ」
2人は納得した様子を見せると、
先をいく先生を追った。
その光景を見て、
私と一之瀬は顔を見合わせる。
「やっぱりあの話、本当なんだ!」
何故だか声が揃ってしまって、
私たちは軽く笑った。
少しすると、彼らは後ろの扉から
教室に戻ってきた。
2人はそれぞれ机と椅子を抱えていた。
先生が、私の左に置くよう、指示する。
其処の道を開けるように、
私と一之瀬は前に机をずらし、
椅子を引く。
もしかして、転入生は男子だろうか。
「神崎、お前の隣、誰だろうな!
男子かなー、女子かなー」
「私は男子だと思うかなぁ〜。
だってこの席の形からいくと
男子じゃない?」
「そう言われてみればそうかも……」