分かんない。
先生が前に立って数秒経つと、
丁度チャイムが鳴り響いた。
「はい、号令」
川上の号令で、いつもの朝礼をする。
皆が着席する。
「はい、おはようございます。
今日はもう皆何となく
察しがついてるだろうけど、
今日は転入生が来ています!」
そういうと坂口先生は
教室の前の扉を開け、
転入生であろう人物においで、と
話しかけると、元立っていた所に
転入生と戻る。
転入生の横顔はすらりとしていた。
彼の姿は、少し散髪料をつけているのか
格好よくなっていた。
けれど、校則に触れているだろう。
「城谷真稀(シロタニマサキ)です。
宜しくお願いします」
彼は城谷と名乗り、お辞儀をした。
「では城谷君、分からない事があったら
隣の席の神埼や、クラスの人に
聞いて下さい。君の席は、
一番後ろの空いている席です」
はい、と紳士に返事をし、
城谷は私を見ながら近付き、
席についた。それからいつもの
坂口先生の朝の連絡が始まる。
何故だかその間、
城谷の方から凄まじい視線を感じた。
というか、城谷は絶対に私を見ている。
「あの……、私の顔に何かついてる?」
城谷の目を見て、そう問いかけた。
やはり城谷は私を見ていた。
「何もついてねえけど?」
素早すぎる返事に、
私はあんぐりと口を開け、唖然とした。
「ははは、まあそう固くなんなよ。
俺、さっきも言ったけど、
城谷真稀。真稀でいいぞ」
得意気に話す転入生に、
私は呆然とするしかなかった。
普通、転入生は同性から
友達を作っていくものでは
ないのだろうか。
「あ……真稀くん、ね……。
私、神埼美佐。宜しく」
「ねえ、美佐って呼んでいい?」
「はっ?」
私は反射的に言っていた。
「こら、そこの2人。
早速仲良くなるのは
とても素晴らしい事だが、
この連絡が終わってからにしてくれ」
「はい」
2人、声を揃えて返事をする。
違う、先生。
私はこんなのと仲良くなってなんかない。
なりたくもないよ。
だけど、先生のおかげで
真稀くんの視線は途切れた。