分かんない。
それも束の間。
先生の朝の連絡が終わり、
1時間目の先生がくるまでの間。
また真稀くんは私の方を向いて
ごちゃごちゃと話しかけてくる
……というか。
コイツと会った事……ある?
いやいや、そんなはずはない。
私は眉間にシワを寄せて
その思考を抹消した。
「ねえ、美佐」
まだその呼び方は許してない!
「いきなり馴れ馴れしく
呼び捨てしないで!」
「えぇ〜、なんで?いいじゃん」
「逆になんで
名前で呼ばれなきゃいけないの!?」
有り得ない。
前の学校では皆と
そうだったのかもしれないけれど、
私たちの学校生徒からみたら
とんでもないことだ。
「俺ら1回会ってるじゃん。
何気付いてねえふりしてんだよ」
「えっ……」
やっぱり先程思っていたことは
当たっていたのだろうか。
あの夏祭りの日の……男?
「だ、だけど……どうして?」
城谷は鼻でフッと笑った。
「いやぁ、すげぇ偶然もあるもんだな。
俺もビックリしたよ。
まさか俺の一目惚れした女と
転校先で出会えるなんてな」
背筋がゾッとした。
あの暗がりの中でも
あそこまで顔を近付けられていたから
結構覚えていたのだ。
「なあ、美佐ぁ〜
俺教科書忘れたんだ〜。
一緒に借りに行こー」
助けに来てくれたのか、急ぎ足で
こちらに駆け寄る圭祐の姿があった。
「いいよ〜!じゃあ真稀くん、
またあとで……ね」
私は城谷の方を見たけれど、
城谷の目は見なかった。
廊下に出て、誰もいない所にまで来ると。
「……っ、圭祐?」
圭祐は力強く私を抱き締めてきた。
「俺は最初から分かってた。
あの顔見た瞬間、アイツはやばいって。
俺絶対お前を守るから」
圭祐はそう言ってくれた。
とても嬉しくて、頬が熱くなっていく。
「でもアイツは大胆だから
もしかしたら俺だけじゃ
守りきれないかもしれない。
一之瀬にも事情話して
アイツに近づかせないように頼むから
アイツにも頼ってくれ」
でも頼りすぎは嬉しくない、と
圭祐が言うと、チャイムが鳴った。