分かんない。
消えた愛



それからはほとんど、
何事もなく冬休みを迎えた。

「一緒にクリスマスとか、
正月とか祝おうな!」

そう言ってくれた圭祐の言葉が
今でも根強く残っている。
素直に嬉しいと思えた。


間もなくクリスマスがやってきた。
クリスマスの日は圭祐の家に
泊まる約束というをしていた。
相手は男でしょ?と
母はとても不安がっていたけれど、
挨拶にやってきた圭祐の態度を見て
この子なら大丈夫だ
と思ってくれたらしい。

「お前の母さん、優しいな!」

「圭祐がしっかりしてるからだよ」

私達は圭祐の部屋で、
遊んだり他愛のない話をしていた。
圭祐は本当に何もしてこない。
けれど、我慢している様子が
思いきり目に見えた。
私は圭祐に悟られない程度に
こっそり笑った。

「なあ、美佐」

「何?」

一見和んでいるように思われる空気。

「一之瀬さぁ…」

私は思わず、
肩をびくりと動かした。

「……大丈夫か、美佐?」

「う、うん。大丈夫だよ」

「そうか……。俺、
一之瀬が思ってる事、
大体分かるんだよなぁ」

「一之瀬が思ってる事?」

「そう」

「どういうこと?」

「お前、気づいてねえの?」

「うーん?」

今最早、この空気は
完全に冷たい何かを醸し出している。

「………………」

「…………………?」

圭祐は押し黙っている。
どうしたのだろうか。
そんなに言いにくい事なのだろうか。

「一之瀬、お前の事狙ってるっぽい」

圭祐はとても真剣な表情で
そう言った。
私も、圭祐のその言葉を
笑ったりはしなかった。
という事はあの時の一之瀬がした事は、
やはり冗談ではなく
本気だったのだろうか。
だけど。

「でも、一之瀬は優しいし、
私を守ってくれたし、
あんな事はしてきたけど
結局冗談だよって言ったし……」

「あんな事?」

圭祐の表情が、
にわかに険しくなった。

「あ……」

まずい。
つい口が滑ってしまった。

「おい。あんな事って何だよ。
俺に言えない事でもあるのかよ?」



< 37 / 94 >

この作品をシェア

pagetop