分かんない。



「そ、そんな事ないよ!
でも、本当に圭祐が
心配するような事じゃないよ」

「あ?俺じゃお前の相談に
乗れねえって事か!?」

「そんな事……」

だめだ。
今圭祐は完全に取り乱している。
いつもの圭祐からは
全く想像のつかない姿だった。

「くそっ!」

圭祐は自分の頭を
思い切りくしゃっとした。
そんな姿を見て私は。

「もう終わった事だよ。
城谷の事もあったけど、
圭祐だってかなり……」

「うるせぇ!
俺はお前をちゃんと守れなかった!
夏休みのあの日の事だってそうだ!」

「圭……」

「俺がお前に、あの日
いきなり告白したから
驚いてただろ?かなり。
最初から俺、
お前の事可愛いなって思ってた。
何回かお前と話して
お前にありがとうって
言われた事もあった。
それだけなのに、どうしようもなく
好きになってたんだ」

圭祐の瞳は本当である事を
物語っているようにも見えた。

「お前と付き合えた事、凄く嬉しい。
同時に守りたいとも思った。
でも、守れてない。
川上や一之瀬ばかりが
お前を守ってしまって……
俺が……
彼氏である俺が
お前を守らないといけねえのに」

「……」

「情けねえな、俺」

「……もういいよ」

「……え」

「もういいよって言ってるの」

私の中で何かが起こっている。
違う。私が言いたいのって
こんな言葉じゃない。
何を言っているんだろう。
思ってもいない言葉ばかりが
圭祐に向けられてしまう。

「私やっぱりあの人の事
忘れられないみたいなの。
勿論貴方の事、好きだった。
でもそれは結局一時的で。
感情が麻痺してただけだって
私、気付いたの。
ごめんね、田所君。
別れよ……」

彼が思い切り目を見開いていた。
私も内心自分の言葉に
驚きを隠せないでいた。
だけどこうした事で、
自分の本当の気持ちに
気づけた気がする。

「何……だよ、それ。
そんなのってありかよ……。
な、なあ、美佐
嘘だよって言ってくれよ。
冗談だよバーカって、いつもみたいに
可愛く笑ってくれよ!」

彼は今にも
泣き出しそうな顔をしていた。




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