分かんない。



私達の担当教師、坂口先生が
元気よく教室に入ってくる。

「おはよう!
昨日の入学式、緊張しただろ?
俺の名前、覚えてる人ー?」

まだ皆緊張しているせいか、
誰も手を挙げる気配はない。

「はいっ、君どうぞ」

えっ、誰?と、
皆が坂口先生の見つめる方に
振り返る。
私もそちらを見ると、
先程挨拶を交わしたばかりの
川上が手をあげていた。

「はい!坂口奏太先生です……よね?」

後半辺りの弱気な言い振りに、
空気が少し和らいだ。
クラスの皆が笑ったのだ。

「ははは、そうだ。
その通りだ、川上克哉君」

「ええっ、もう俺の名前
覚えてるんですか?」

川上は驚きの表情を浮かべた。
皆も少し驚いたような表情で、
今度は視線を
坂口先生に向けた。

「皆の名前を覚えてるぞ。
でも顔写真まではなかったから、
しばらくはその席順で
座っててくれないとわからない。
さあて。
川上君のおかげで
少し空気も和らいだ事だし、
係と委員決めをします!
1番最初だしな、
不安も多少あると思うから
友達と一緒になってもいいぞ。
出来れば男女で
決めてほしいと俺は思う!
じゃあ話し合いの時間をとりまぁす」

話し合いと言われても、
私の周りに話が出来る女子など、
いただろうか?
私と同じ小学校の人が
2人しかいないし、
そのもう1人の人は
知っているけれど
そこまで仲が良いという訳でもない。

「なあ、神埼」

隣で声がした。
右を向けば、私の方に
身を乗り出して話しかけている
川上の姿があった。

「な、何?」

「一緒に代議員になろうぜ」

代議員は確か、号令をかけたり
教室の鍵の管理をしたり
クラスの代表をしたりといった
面倒な委員会活動だったはずだ。

「えー……って。
私なんかと一緒でいいのか?」

「別によくね?
話せる女子、お前だけだし
先生も出来れば男女がいいって
いってただろ?
俺ら以外は多分同姓同士が
多いと思うんだよな」




< 4 / 94 >

この作品をシェア

pagetop