分かんない。



気持ちが落ち着いてから
私は夕飯に手をつけた。
今日は私の好きな物が
ほとんど揃っていた。
ご飯を口に運びながら考える。
どうして自分が圭祐に
あんな事を言ってしまったのかを。
でも、いい機会だとも
思えるようになった。
この自分の考えが
間違っていたらどうしようか。
母に全て話そうかを悩む。
分身なら……いいのではないか?
私は夕飯が終わった頃に
おぼんを持って台所へ行った。

「母さん」

案の定母は、皿洗いをしていた。
母は振り向いた。

「あら、食べ終わったのね」

「うん。ごちそうさま」

おぼんを母に渡した。

「手伝うよ」

「あら、ありがとう」

母の手伝いをしながら
私はタイミングを見計らって切り出した。

「あのね、母さん」

母さんは驚きもせず
私の話を最後まで聞いてくれた。
嘘偽りなく母に話すことで、
母と心が繋がったような気がした。
中学に入学してからの
川上や一之瀬の話をした。
城谷や、圭祐の話も勿論した。

「そう。そんな事があったの。
モテる女は辛いね。
でも美佐は川上くんの事が好きで
結局は圭祐君の事
振っちゃったのよね。
でも、美佐は美佐よ。
それが美佐の道なの。
例えしばらくして圭祐君を振った事を
後悔するとしても、
結局そこからまた新しい幸せを掴むの。
そうして人生というものが
出来上がっていくのよ。
いい?それが、人生ってものなの」

まだ母も若いはずなのに
どうしてこんなにも
達者な事を言うのだろうか。
だけど、否定も出来ず、
ただ凄いなと思うばかりだった。

「ありがとう、母さん。
少し元気になれた気がする!
川上とまた、仲良くなれるように
努力してみるね!」

母は、娘を元気付けられた事が出来て
嬉しかったのか、笑顔になった。

「うんうん。
また何かあったら相談しなさいよ。
今日はもう疲れただろうから寝なさい。
明日、暇なら私の事も話してあげるわ。
分身同士、相手の事はちゃんと
知り尽くしておこうじゃないの」

そう言って微笑む母の顔は
とても幸せそうだった。



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