分かんない。
玄関の開く音がした。
私は部屋のドアに耳をあてて
2人の会話を聞く事にした。
「こんにちはぁ、いらっしゃい。
この前美佐が連れてきた子よねぇ」
「はい。……あの、美佐は?」
「美佐?あー、あのねぇ
私がお使いに頼んでるの。
かなり沢山頼んじゃったから
多分苦戦してるわぁ。
……あ、良かったら
リビングで、待っててくれる?
連れてくるから」
「あ、はい。お邪魔します」
え、母さん何してんの!?
「あ、そうそう。
他の部屋は散らかってるから
見ちゃダメよ〜」
バタン。
母は出て行ったようだ。
一体何を考えているのだろうか?
何だか変な音がした。
カーテンを捲ると母がいた。
「母さん!」
「しーっ。多分あの子
こっち来るわ。逃げましょ。
後は私だけ戻って
話の相手でもするから。
ごめんね、断りきれなくて…」
自分もその気持ちが分かるから
怒ったりなどはしなかった。
しかしここから出るのは……。
とんとんとんとん……。
まずい、こちらに来る!
押し入れに隠れるからと言って
母に逃げてもらった。
よし、逃げ……
ガチャ。
「…………あ……」
扉を開けて入ってきた圭祐と
押し入れに隠れようとした私は
ばっちりと視線をぶつけてしまった。
「へぇ?母さんとお前、グルか。
まあいいや」
圭祐は無表情で扉を閉める。
内側ロックまでかけてしまった。
しまった、どうしよう……!
「この3000、返すわ」
圭祐は私の机の上に
この前私が渡した金を置いた。
「お前に嫌われるなんて嫌だ。
絶対に嫌だ。死んでも嫌だ。
でもお前が嫌がるなら
いっその事襲って、
繋げるしかないよな」
圭祐の声は冷たく、
声にも表情にも感情はなかった。
圭祐はつかつかと
私の目の前まで歩いてくると、
いきなり姫抱きをした。
「ち、ちょっと!」
圭祐が向かう場所は……
ベッドだ。