分かんない。



川上はもう大丈夫だよ
と言わんばかりに、
私の頭を優しく撫でた。
私が川上の兄さんに
怯えているからという理由で
川上はあのカーテンをかけてくれていた。

「……ありがと、川上……」

彼は返事をする代わりに
私の頭をぽんぽんと叩いた。
それがとても
ドラマで見るようなシーンだと思えて、
川上の顔を見るのが恥ずかしかった。
だけど、嬉しくもあった。

「…着いたよ」

川上の兄さんが
先に車から降りる気配がした。
私たちもすぐに車から降りた。

本当の災難はこれからだった。



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