分かんない。



「あ、美佐ちゃんいらっしゃい!
遅かったわねぇ」

玄関に入ると早速、
川上の母さんが出迎えてくれた。

「いやぁ〜。
彼氏もいる美佐ちゃんが
俺らの家に泊まりに来てくれるなんて
マジ嬉しいな〜、俺。
な、克哉もだろ?」

そこには、さっきの事など
全く気にしてないという態度の
川上の兄さんの姿があった。
これには川上も苛々しているのか
妙なオーラが彼から出ていた。

「泊めるっていったって
美佐ちゃんは彼氏がいるんだし
まだ中学生だから
あたしと同じ部屋で寝るのよ!
あんたたちと一緒にしたら
美佐ちゃんが可哀想よー」

分かってるよ、そんな事。
と言っているような表情で
川上は、川上の母さんにつっこんだ。

「分かってるって。
でも同じ屋根の下だし、
今日は夜まで一緒にいられるな。
俺すっげぇ楽しみ!」

川上はとても楽しそうだった。
私も、とてもとても嬉しかった。
だけどそう言ってしまっては
皆の言ゔ彼氏゙に悪いだろうし、
変に気を遣わせてしまうかもしれない。
そして……恥ずかしい。

「あ、はは……そうだね〜」

そんな私の様子を、
兄と母は不思議そうな顔をして見ていた。
大体の時間は川上と
彼の部屋で過ごす事になっている。
川上の部屋に入ってから
大方の荷物を
恥っこに置かせてもらった。

「んー。2日分なのに多いな」

私の大きな鞄を見て
川上は少しだけ
困ったような顔をしていた。
別に川上に迷惑が
かかる事でもないと思うけれど。

「……ふふ。
この正体は明日のお楽しみ!」

川上はそれを聞いて
えー!気になるじゃん!
と言って口を尖らせていた。
それが可愛くて私の心臓はとくんと
脈を打っていた。

「いやぁ、でも本当
田所の彼女である神埼が
泊まりに来てくれるとは
思ってなかったよ」

「あ……
その事、なんだけど。
私、別れちゃったんだ、圭祐と」

「え……」

川上は如何にも
驚いている という表情をしていた。
親友である川上にも
なるべく沢山話そうと思ったのだ。



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