分かんない。
「本当はね、
最初から好きな人がいたんだ。
でも圭祐は
そんな奴の事を忘れられるくらい
俺に夢中させてやるからって
そう言ったの。告白の後は
本当は怖かったなんて言ってた。
そりゃあ勿論圭祐の事は好きだった。
愛してた。
でも今となっては全て過去の話。
今でも彼は
私を取り戻そうと必死。
だけど私、もう決めたの。
好きな人一途になる。
でもやっぱり恥ずかしくて、
振られるのが怖いから
私、どうしても告白出来ない。
その人も好きな人いるみたいだし。
振られないって確信なんかなくてさ。
もし。
もしこの恋が自然に消滅したり
失恋に変わってしまったら、
その時はその時で
また新しい恋をしようって思ってる。
ごめんね、なんか。
でも川上の心に
その事を留めといてほしくて」
川上は最後まで真剣に聞いてくれた。
「私、最低だよね。
好きな人の事を忘れようとして
圭祐を利用して付き合うなんて」
私は俯いてしまっていた。
「そんな事ない」
私の話を聞いていて
ずっと押し黙っていた川上が
やっと口を開いた。
「お前は何も悪くない。
田所が告白してきて
断りにくかったんだろ?」
私は少し目を見開いてしまった。
「それにもう、こうして
アイツと別れたんじゃないか。
好きな人の事を想って」
川上の優しい言葉に
私は顔を上げて彼の顔をみた。
川上の顔は何故だか
悲しそうな笑顔を浮かべていた。
どうしてそんな
悲しそうな顔をするの?
「まぁ……お前は
好きな人と頑張れよ。
俺も好きな人と頑張るから」
川上は私の目を見ずに言った。
「うん、ありがとう」
「美佐ちゃーん、克哉ー。
飯だぞー」
川上の兄さんの声がした。
「ああ、もうこんな時間か。
今日は大晦日だし、
さっきの事は忘れて騒ごうぜ!」
「うん、そうだね!」
川上の家のご飯はとても美味しい。
だけどやっぱり
私の母さんのご飯が好きだ。
川上曰く、川上の母さんは
私が来ているから
いつもより頑張ったらしい。