分かんない。



電話の着信は
調べようか調べまいか
とてつもなく迷っていた。
メッセージも何度も届いているようだ。
結局、聞く事にした
口を思いきり押さえて。

『美佐、今忙しいのか?
また掛けるな?』

意外にも普通だった。

『美佐……今何してんの?
メールくらい返せよ』

段々苛立ってきているようだ。

「……っっっっっっ!!!???」

私は思い切り叫ぶかわりに
思い切り体をびくつかせた。

『あぁ……美佐ぁ……っ
美佐の事考えるだけでいきそう…
はぁ…ああ―――』

気持ちが悪すぎて
途中で聞くのをやめてしまった。
泣きたくなった。
どうして私ばかり
こんな変な目にあうの?




始業式。
私は心底怯えていた。
田所への恐怖を隠す事もせず、
ただひたすらに震えていた。
1人になってしまったら
田所に殺されそうな気がして、
一時も、誰とも
離れようとはしなかった。

「ちょっとぉ、美佐ぁ。
くっつきすぎぃー。どうしたの?」

田所はいつもの゙あの゙田所だ。
ああ、そう。それがあんたのオモテ?
一之瀬は普段と変わらず
私に優しくしてくれている。
席がまた一之瀬と隣だったので
私たちはいつも一緒だ。
まるで恋人のように。

「…………………」


「なあー、神埼と一之瀬ってさ。
付き合ってんの?」

クラスの男子が、
会話をしている私たちに話しかける。

「ああーそれあたしも思うー。
美佐ちゃん田所くんと
別れちゃったんでしょー?
勿体なぁーい。
一之瀬もいい奴だけどさあー、
美佐ちゃん今度は
一之瀬と付き合ってるのー?」

私は一之瀬と顔を見合わせて
皆に告げる。

「ううん。一之瀬は優しいし
気も合うから一緒にいるけど、
そんなつもりじゃないし、
付き合ってもないよ」

一瞬、一之瀬が
切ない表情をした気がした。



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