分かんない。
最近、甚太は
苛々している様だった。
私が何かにしたかを聞いたら
私ではないというので
解決の仕方が分からない。
何とか甚太の力になりたい。
彼が怒っている間も
やっぱり何かしらのプレゼントが来る。
これは処理し切れないと悟った私は
それらを遠慮なく使い始めていた。
とはいえ、1人では流石に辛いので
母に使ってもらったりもしている。
一生分の香水はあるかもしれない。
明日はバレンタインだ。
どんなチョコを作ってあげようか
必死に考える。
甚太は金持ちだから、
高級なものにしなければ
ならないだろうか。
なるべく豪華になるような
そんな材料を探し求めて
店の中を歩いていた頃だった。
「っふふふ、美佐あぁ」
「ひッ……!!」
気づけば店の隅にいた。
後ろには聞き覚えのある
狂おしく私の名を呼ぶ声。
振り向かずともわかっていた。
思わず助けを求めるために
天井を見上げたけれど
ここは……防犯カメラの死角だった。
「美佐ぁ、俺だけの美佐……。
どうして俺の所に来ない……?
俺、もうお前の事が好きすぎて
友達にメンヘラって言われちゃったよ」
「め、メンヘラ?何それ、知らないよ!」
「知らなくていいよ……。
美佐は俺の傍にさえいてくれれば
何もかもが上手くいく」
「私の気持ちはどうでもいいの?」
「美佐は俺が好き」
「はっ?」
田所は狂おしい笑みを浮かべたまま。
「美佐は俺が好き。
恥ずかしいから拒むんでしょ?
分かってるよ。
でもいつか
恥ずかしがる余裕もなくなるくらい
俺の色に染めてあげる……」
田所はそう言うと、僅かにも力強く
私のもとへ歩いてくる。
ゾンビのようだ。この人は本当に
イカれてしまったのかもしれない。
「いやっ、やめて!甚太っ………」
心の中で助けを呼ぶ。
そんな事をしても、
誰も助けに来ない事は
痛いほど分かっていた。
田所の手が私の首に触れる。
その手は、狂っている田所からは
想像も出来ない程優しい手つきだった。