分かんない。
「離して……くれないかな、田所?」
だけど腕の力が強まるだけで
離してもらえる様子もなかった。
「離さない。ねえ、返事頂戴?
俺さ、本気で神埼の事好きなんだ」
返事……と言われても。
どう答えればいいのだろうか。
こうして私に好意を寄せてくれる人が
いるというのはとても
喜ばしいことだ。けれど……、
その誘いを素直に
受け入れられない自分がいた。
やっぱり、恋……。
一目惚れしてたんだ、川上に。
「ごめん……、私…
好きな人がいるから……」
少し、私を抱く力が弱まった。
だけど、それは一瞬で
田所は再び強い力で私を抱いた。
「ちょっ……」
「それでも俺、構わないよ?
神埼の言う好きな人なんか
忘れさせられるくらい自信あるよ」
そんな言い方をされては
どうしようもなくなる。
「他の女とか可愛子ぶってるし、
俺さ、神埼みたいな
男勝りみたいな口の女を
落として甘えさせるの
燃えるんだよね。
ね、自分でも男勝りだって思わない?」
いや……確かに
私の思惑は合っているけれど……。
まさかそれに燃え上がって
近付いてくる男がいるとは
思ってもみなかった。
まあ……もし
川上に告白をしたところで
フラれたら気まずいだけだし、
田所と付き合って、
川上とはそのまま
友情を築くが
幸せな道なのかもしれない。
田所の腕の中で考えた末、
私は顔をあげて答えた。
「………分かった」
ふと、田所の力が極端に弱まった。
力抜けでもしたのだろうか。
「…………良かった…」
田所の口から漏れたのは
顔に合わず、弱々しい声だった。
「俺本当は怖かった。
振られるんじゃないかって。
でも神埼を抱いた時から
何故だか暴走は止められなくなって。
不思議と言葉が出てきたんだ。
初めに好きな奴がいるって
言われた時は、本気で無理かと思った。
でも不思議と口が動いたんだ。
こうして神埼を手に入れられたこと、
滅茶苦茶嬉しく思ってる。
OKしてくれてありがとう……」