分かんない。
ずっと、ずっと…
高校の合格が決まった翌日、
私と川上さんはまた河原に来ていた。
「とうとう自分の通える高校が
決まったんだな……。神埼は
どの高校に決まったんだ?」
「私は***高校と、〇×高校と
☆☆高校が合格してた。
川上さんは?」
「俺?神埼と同じ高校と、
それ以外の滑り止めも全部受かってる!」
川上さんは嬉しそうに言った。
「で……、神埼はどこに行くんだ?
俺は出来れば神埼と同じ高校がいいな」
照れるように言う川上さんの顔は
赤くも真剣な表情をしていた。
「なら……同じ高校でもいいよ」
「おう」
少し沈黙が走る。
「……寒いな」
川上さんが、私の目を
じっと見つめてくる。
「うん、寒いね」
私の鼓動はどんどん速まっていく。
どうしてこんなに速くなるんだろう。
もしかしたら川上さんに
この鼓動が聞こえているかもしれない。
「……あ、あの、さ。
俺……前から神埼に
伝えたい事があったんだ……」
「何?」
「……本当に、覚えてないんだよな?
俺の事も、他の奴らの事も……」
「……うん」
「大変だよな。
知らない奴ばっかで」
「でも川上さんが仲良くしてくれるから
私、大丈夫だよ」
「本当は凄く傷ついてるくせにか?
たまに……悲しそうな顔するじゃないか」
川上さんは体を少し動かすと、
私を急に、腕の中に閉じ込めた。
「えっ、ちょ――」
暖かい腕の中。
私を安心させてくれるような
そんな暖かさ。
「これからは、俺の胸で
泣いてくれないか。
神埼が俺の知らない所で
泣いてるのは、辛い」
ほろりと涙が零れ落ちた。
「……あ……」
思い出した。
「ん?」
今までの事。家族の事。
田所の事。一之瀬の事。
そして――。
――川上の事。