白き薬師とエレーナの剣
序章
あらゆる病を治す力を持つ、『久遠の花』と呼ばれし薬師の一族。
昔は不老不死の術を持っていると言われ、その力を狙う者もいた。
人を生かすことが『久遠の花』の使命。
たとえ己の命を犠牲にしてでも生かしてみせる、という誇り。
幼い頃からそう教えられ、自分もその一人なのだと嬉しく思っていた。
幅広い知識も、先人が築き上げてきた技術も、万能薬となる我が身の血も。
すべては苦しむ人々を、一人でも多く救うために存在する。
個人の利益のためだけに独占されることは許されない。
そんな輩から守るために生まれた『守り葉』。
彼らが体を張って守ってくれるからこそ、安心して暮らすことができた。
けれど、もし守り切れず捕らわれることになるなら、悪用される前に自ら命を断てと教わった。
悪用され、人を傷つけるぐらいなら、自分が死んだほうがよっぽどいい。
その覚悟は出来ていたつもりだった。
けれど、何の前触れもなくそれが現実になった時。
次々と倒れていく仲間たちに背を向け、気づけば妹の手を取って逃げていた。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
森の中を走っている最中、ずっとそのことが頭の中を巡っていた。
昔は不老不死の術を持っていると言われ、その力を狙う者もいた。
人を生かすことが『久遠の花』の使命。
たとえ己の命を犠牲にしてでも生かしてみせる、という誇り。
幼い頃からそう教えられ、自分もその一人なのだと嬉しく思っていた。
幅広い知識も、先人が築き上げてきた技術も、万能薬となる我が身の血も。
すべては苦しむ人々を、一人でも多く救うために存在する。
個人の利益のためだけに独占されることは許されない。
そんな輩から守るために生まれた『守り葉』。
彼らが体を張って守ってくれるからこそ、安心して暮らすことができた。
けれど、もし守り切れず捕らわれることになるなら、悪用される前に自ら命を断てと教わった。
悪用され、人を傷つけるぐらいなら、自分が死んだほうがよっぽどいい。
その覚悟は出来ていたつもりだった。
けれど、何の前触れもなくそれが現実になった時。
次々と倒れていく仲間たちに背を向け、気づけば妹の手を取って逃げていた。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
森の中を走っている最中、ずっとそのことが頭の中を巡っていた。