白き薬師とエレーナの剣
「あそこに薬研と乳鉢があるぞ。ったく雑に置きやがって――」
文句を言いながら、水月は荷物につまずかないように足を運び、見つけた道具の元まで行く。
適当に床へ置かれて横倒しになっていた乳鉢を手にすると、水月はいずみに呼びかけた。
「ここにあるヤツで間に合うか? もっと特殊な道具が必要ならオレが探しておくぜ」
「その二つがあれば大丈夫よ。あとは材料だけれど……」
改めて部屋の中を見渡して、いずみは小さく息をつく。
今から荷物を一つずつ開けて、必要な材料を探していくことを考えるだけで気が遠のいてしまう。
水月がため息を吐き出し、うんざりとした表情で頭を掻いた。
「じゃあオレが材料の入った荷物を探して出していずみの近くに置いていくから、中を確かめてくれ。……悪いな、オレも薬草に詳しけりゃあ、一緒に手分けして探せるのに」
「ううん、ありがとう。積まれた荷物を下に置いてくれるだけでも助かるわ」
きっと自分だけなら荷物を持ち上げ切れず、ひっくり返して中身を床へ撒き散らすという惨事になっていただろう。
いずみが己の非力さを痛感していると、水月がククッと喉で笑った。
「そういえば、昔から薬作りのこと以外は不器用だったな。何もない所で転んだりもしていたし」
咄嗟に「そんなことないわ」と言おうとして、いずみは開きかけた口を閉ざす。
今まで何度も転んでいるところを、水月に目撃されていたことを思い出し、頬が熱くなってきた。
(水月の足を引っ張らないように、これからは今まで以上に気をつけなくちゃ)
いずみが気を引き締めていると、ポン、と水月に軽く肩を叩かれた。
「足らない所はオレが何とかするから、いずみは薬作りに専念してくれよ。頼りにしてるからな」
ニッと力強く水月は笑うと、辺りを見渡してから、一番近くに積まれてあった荷物を降ろしていく。親の手伝いをしていたおかげか、荷物の扱いが手馴れている。
自分ばかり甘えていてはいけない。
いずみは袖をまくって意気込むと、水月が「こっちは材料だぜ」と指差した荷箱を開けた。
文句を言いながら、水月は荷物につまずかないように足を運び、見つけた道具の元まで行く。
適当に床へ置かれて横倒しになっていた乳鉢を手にすると、水月はいずみに呼びかけた。
「ここにあるヤツで間に合うか? もっと特殊な道具が必要ならオレが探しておくぜ」
「その二つがあれば大丈夫よ。あとは材料だけれど……」
改めて部屋の中を見渡して、いずみは小さく息をつく。
今から荷物を一つずつ開けて、必要な材料を探していくことを考えるだけで気が遠のいてしまう。
水月がため息を吐き出し、うんざりとした表情で頭を掻いた。
「じゃあオレが材料の入った荷物を探して出していずみの近くに置いていくから、中を確かめてくれ。……悪いな、オレも薬草に詳しけりゃあ、一緒に手分けして探せるのに」
「ううん、ありがとう。積まれた荷物を下に置いてくれるだけでも助かるわ」
きっと自分だけなら荷物を持ち上げ切れず、ひっくり返して中身を床へ撒き散らすという惨事になっていただろう。
いずみが己の非力さを痛感していると、水月がククッと喉で笑った。
「そういえば、昔から薬作りのこと以外は不器用だったな。何もない所で転んだりもしていたし」
咄嗟に「そんなことないわ」と言おうとして、いずみは開きかけた口を閉ざす。
今まで何度も転んでいるところを、水月に目撃されていたことを思い出し、頬が熱くなってきた。
(水月の足を引っ張らないように、これからは今まで以上に気をつけなくちゃ)
いずみが気を引き締めていると、ポン、と水月に軽く肩を叩かれた。
「足らない所はオレが何とかするから、いずみは薬作りに専念してくれよ。頼りにしてるからな」
ニッと力強く水月は笑うと、辺りを見渡してから、一番近くに積まれてあった荷物を降ろしていく。親の手伝いをしていたおかげか、荷物の扱いが手馴れている。
自分ばかり甘えていてはいけない。
いずみは袖をまくって意気込むと、水月が「こっちは材料だぜ」と指差した荷箱を開けた。