幼なじみ

その時、後ろから「邪魔!」と声がした。
顔を見なくてもわかる・・・かっちゃんだ・・・
振り向くと、ものすごく不機嫌な顔をしたかっちゃんが、あたしのことなんて見向きもしないで素通りしていった。

「かっちゃん・・・」

思わず声を掛けそうになって、あたしは慌てて口をつぐんだ。

そうだ・・・かっちゃんはあたしの顔なんて見たくなかったんだ。
なのに、声なんて掛けたら、かっちゃんに迷惑だよね・・・

かっちゃんの冷たい後ろ姿を見て、あたしはあの約束を思い出していた。

「けっこんしようね!」

あたし、バカだね・・・
まだあの約束忘れられないなんて・・・
あたし達はもう、話すことすら出来ないのに・・・

そんなあたしを、門脇くんがじっと見つめていたことなんて、あたしは全く気づいていなかった。

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