ラ イ ア ー 《 嘘 》
昨日の、あんな非現実的なことなんて、夢だったんじゃないかと思う。
……いや、…私が、
夢であってほしいだけだ。
――昨日のことは、
紛れも無い“現実”なんだ。
しっかりと、鮮明に、私の記憶の中に、
あの、
この世のものとは思えない不気味で、
不思議な低く掠れた声が。
黒いマントで身を覆う、あの姿が。
怖いくらい紅い、
あの笑みを浮かべる口元が。
全部全部、…残されているのだから。