ラ イ ア  ー 《 嘘 》


昨日の、あんな非現実的なことなんて、夢だったんじゃないかと思う。

……いや、…私が、
夢であってほしいだけだ。


――昨日のことは、
紛れも無い“現実”なんだ。


しっかりと、鮮明に、私の記憶の中に、

あの、

この世のものとは思えない不気味で、
不思議な低く掠れた声が。

黒いマントで身を覆う、あの姿が。

怖いくらい紅い、
あの笑みを浮かべる口元が。


全部全部、…残されているのだから。


< 36 / 101 >

この作品をシェア

pagetop