ラ イ ア ー 《 嘘 》
「…ううん、大丈夫だよ。ありがと」
「そっか。…なら、いいけど、さ」
不安げな表情を浮かべながら、圭人は私の額に当てていた手をゆっくりと離した。
またみんなの中心に戻っていく圭人の背中を見ながら、ぼーっと思う。
「(…優しいよなぁ、昔から…。圭人は)」
些細なことに気が付いて、いつも声をかけてくれる。
自分より、先に相手を優先させちゃう…。
昔から、圭人はそんな人だった。
「(はぁ……、)」
そんな圭人だったら、
私みたいに迷わずに、
――自分が犠牲に、…なったのかな。