ラ イ ア  ー 《 嘘 》


「それとだ。あの広瀬圭人という男、あの男は、どうやらお前に好意を寄せていたようだ」


「えっ……!?」


思わず驚きの声が出た。
信じられない…。圭人が、私の事を、好き…だった?


「お前は全然気づいていないようだったが、斉藤陸のほうはそれに気づいていたようだった。藤野梨帆と同じようにお前と恋仲の斉藤陸を憎んでいた広瀬圭人は、犠牲に『邪魔な存在』の斉藤陸を選んだ。斉藤陸は自分が広瀬圭人の憎しみの対象だと気づいていた。だから、正直斉藤陸にとって、自分を憎み、自分の恋仲の木崎沙菜――つまりお前に好意を抱いていた広瀬圭人の存在は面倒でいらないものだったのだろう。そして、斉藤陸は犠牲に、『面倒でいらない存在』でしかない広瀬圭人を選んだ」


次々と並べられる言葉に頭がついていかなかった。


――梨帆は、陸が好きで。

私は、邪魔な存在で。

――圭人は、私が好きで。

圭人にとって陸は邪魔な存在で。

陸はそれに気づいてて。

陸にとって圭人は面倒な存在で――……




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