彼の思惑 彼女の魅惑
──不意に、携帯からある曲が流れ出した。
一気に現実へ引き戻される。
彼の前では決して鳴るはずのない、だからこそ設定した着信音が、なぜ?
慌てて伸ばした手が携帯を掴んだ時、更なる動揺を覚えた。
鳴ったのは私のじゃない。
目覚めた彼が、鳴り止んだ自分の携帯を片手に、私の不可解な行動の意味を探ってる。
そして、確認するように画面に私の番号を出すと、ゆっくり通話ボタンを押した。
再び鳴り出す彼の好きな曲。
今度は間違いなく、私の携帯から。
弁解しても、きっともう遅い。
悟った彼は、もう必要ないと知ったスーツの上着を初めて私の前で脱ぎ捨て。
耳元で囁いた。