イケないこと
イケないこと
『着いたよ』
夜中に鳴ったメールの受信音。
パジャマにストールを羽織った姿で、パタパタとエントランスから外に出ると、
いつものように、バイクにもたれかかって待つ、健吾の姿が見えた。
「ごめんね、こんな時間に」
私は携帯をポケットにしまうと、ほんのり濡れた長い髪を、耳にそっとかきあげた。
彼はいつものように「ううん」と答えると、心配そうに様子をうかがう。
「桐島さんと何かあった?」
桐島さんとは私の六つ年上の彼氏。
そしてバイト先の店長。
健吾は桐島さんの店で働く、私と同い年の先輩。
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