イケないこと


私よりも彼を良く知っていて、
それで時々こうして話を聞いて貰っていたんだ。


すぐ近くの公園を歩きながら、何も言わず私の話を聞いてくれる健吾。

「…でもさ、それって…」

そう彼が口を開いたと同時に、ポケットの携帯が音をたてる。



桐島さんからだ。



三回目の着信音に、私はゆっくりと携帯を耳にあてる。

『これから会えない?』


彼は知らない。私がこうして健吾に相談にのって貰っている事を。

イケない事をしている訳ではないのに、私の胸は慌て出す。

時折感じる
不自然な会話の間。


その時。



突然背中に感じた体温に、私の胸は大きく跳ね上がった。

力強く、そしてどこか落ち着く、背後から回されたその腕に、私の鼓動が音を増した。


『もしもし?』


私には彼氏がいる。

だけど、その心地よい背中の圧迫感に、健吾に今、感じている自分がいる。

この胸の高鳴りに、感情に流されてしまいそう。


揺れ動く私の心に、彼がそっと囁いた。


「ごめん――」



――俺、もう我慢できそうにない…



[完]


< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

secret love -彼氏の秘密-

総文字数/10,338

恋愛(純愛)41ページ

表紙を見る
翻弄される男

総文字数/9,436

恋愛(オフィスラブ)16ページ

表紙を見る
君に触れたくて

総文字数/3,135

恋愛(オフィスラブ)6ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop