《短編》空を泳ぐ魚2
「辞めて欲しいなら、いつもで辞めてあげるよ。」


「―――ッ!」



おいおいおい!


何か知らねぇけど、何を突然言い出してんだよ?!



「ははっ、売り言葉に買い言葉、だよな?」


“なぁ、清水?”


そう確認するように問うてみても、清水の顔が緩むことはなくて。


それどころか、俺まで睨み付ける始末。



「と、とにかく!
私の授業、ちゃんと出なさいね?」


先に耐えられなくなったのは、桜井先生で。


その言葉を投げ、授業の開始の近い教室へと向かう。


とりあえずは安堵のため気を吐き出しながら俺は、

恐る恐る再び清水に顔を向けた。



「あたしが居ると、邪魔なんでしょ?」


「―――ッ!」


ハッと笑った清水は、俺に背を向け歩き出して。


静止の声を上げようとした瞬間、チャイムの音に遮られた。



ヤバい。


何かわかんねぇけど、今のアイツは相当ヤバい。


多分、それに気付いてるのは俺だけだろう。


だけどこんな場所じゃ、抱きしめるどころか問いただすことさえままならなくて。


伸ばせなかった手の行き場を探すように、拳を握り締めた。


とにかく昨日から、何かが違う、ってことしかわかんなくて。


ただ、悔しかった。


わかりたいはずなのに、そうさせてはくれなくて。


俺でさえも、その心の中への侵入を拒むのだろうか。



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