《短編》空を泳ぐ魚2
♪~♪~♪

岡部の家とは逆方向の自分の家へと足を進めていると、

珍しくあたしの携帯が着信を告げた。



着信:岡部

「―――ッ!」


ディスプレイを確認し、目を見開いたまま戸惑って。


普段なら、10回に1回くらいしか、

気分が乗った時しか出てあげないけど。


今日ばかりは、そんな余裕さえもなくて。



―ピッ

気付いたら、通話ボタンを押していた。



「…出て、くれたんだ…」


いつもと全く違うほどに、岡部の声は弱々しくて。


言葉に詰まってしまう。



「…何やってんの?
あの後、ずっと心配してたんだ。」


「―――ッ!」



何で、あたしの心配なんかするんだろう。


そんな風に思うと、泣きそうで。



「…セナ…?」


電話口で岡部は、優しくあたしの名前を呼んで。


もぉ、構わないで欲しかったのに。



「今、どこだ?」


「…コンビニの…近く…」


「すぐ行くから!
そこ動くなよ?」


瞬間に低く聞いてきた声に驚きあたしは、場所を告げてしまった。


制止の声を掛けるタイミングさえないままに、通話が無理やりに遮断されて。


規則的に鳴り響く機械音にあたしは、

街灯に照らされながら途方に暮れた。



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