《短編》空を泳ぐ魚2
進路も決まらないどころか、やりたいことさえも見つからない。


消去法を試してはみたが、やりたくないことばかり頭に浮かぶ。


仲間である誠なんて、昔から自分の夢を見つけていると言うのに。


焼き魚にでもなりそうなほどに照りつける日差しも。


同じくらいにウザい岡部も、勉強も。


何もかもが、思い通りにならなくて。


今まではフラフラとしていても、“学生”という大義名分の下、

好き勝手にやってこれたけど。


あたしも自由に泳ぎ回れる、魚になりたい。


人間社会の悩みさえちっぽけに思わせてくれるような、魚になりたい。


そんなことを考えて出した進路表で、担任から説教を受けた。


“人魚姫になりたい”の何が悪い。


人間社会に憧れて、アホな王子となんて出会わなければ、

毎日を楽しく生きていたはずだったのに。


あたしが人魚姫なら、そんな馬鹿な考えは起こさなかったのに。


代われるものなら、その時の人魚姫と代わってあげたい。



なんてことを考え出すと、進路のことに向けていた思考が別の方向に向いて。


面倒になっては、考えることをやめてしまうのだ。


多分、あたしの悪い癖なんだろうけど。


こればっかりは、どうすることも出来ないんだ。



「清水さーん!
受験勉強の息抜きに、一発ヤらせてくれよー!」


まるでからかうようなその声の主を睨み付け、

サボるための場所探し。


こんな馬鹿でも進路が決まってるって言うのに、何であたしは何もないの?


そうか。


あたし、今まで何も考えずに生きてきたんだ。


考えることから逃げてただけだったんだ。


だったらあたしも、自業自得だね。



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