《短編》空を泳ぐ魚2
あの後すぐに、清水の就職が決まったことを担任から告げられた。


俺は、そんな話聞いてさえいなかったのに。


俺なんか居なくたって、お前はきっと、ひとりでも生きていけるんだろうな。


俺もぉ、アイツにとって必要ないのかな。



あれから3回ほど、清水の携帯を鳴らしてみたけど。


だけど当たり前に、通話ボタンが押されることはなくて。


学校に居たって、目も合わせてくれない。


用済みだ、って。


言われてるみたいで、悲しくなった。




「…岡部先生。
あの、ご相談があって…。」


職員室の隣のデスクから、桜井先生が声を潜めて話しかけてきた。



「どうかしました?」


体に馴染みすぎた笑顔を無理やりに作り俺は、桜井先生に向けて。


俺今、人の相談とか受けてる場合じゃないんですけどね?



「…ここではちょっと…。
出来れば今晩、お付き合い頂けたらと思って…。」


「…え?」


「あっ、いえ。
迷惑じゃなければ、なんですけど。」


そう小さくなって桜井先生は、いつもみたいに顔を赤らめた。


仕方なく俺は、“良いですよ”と告げて。


さすがの俺も、飲みたい気分だし。


飲まなきゃこんなの、やってられねぇよ。


本気で好きだと気付いたら、今度はそれを伝えることさえ出来ないんだから。


まるで、生徒に手を出した罪を、今更になって咎められているようで。


いつの間に俺は、こんなにも“教師”って仕事に馴染んでいたのだろう。


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