《短編》空を泳ぐ魚2
「…私、この前まで居た学校が女子高で…」
そう話しながら桜井先生は、洒落た居酒屋で透明な色を口に含む。
その姿を横目に見ながら俺は、
焼酎をロックで飲む彼女に愛想笑いを向けた。
まぁ、見るからに“お嬢さん”な桜井先生が、
うちの学校に慣れるには、時間が掛かるのだろうけど。
「…私、正直言って先生のクラスの清水さん、苦手なんです。」
こんなところで聞きたくない名前に、ため息を混じらせた。
思い出したくないってのに、ずっと頭の中にはアイツが居て。
「それに、うちのクラスの白石くんも。」
酔っ払っているのか桜井先生は、
相槌を打つ俺にそう付け加えながら言葉ばかりを投げて。
こんなところでも、清水と白石、か。
まぁ、あの二人はうちの学年で問題児ツートップだしね。
「…清水さんだって、真面目に授業を受けてるのかと思ったら、私の話に聞く耳持とうともしないし。
きっと、家庭環境や友人関係が悪いに決まってます。」
いや、アンタは性格が悪いよ。
そう言いたかったが、言葉を飲み込んだ。
こんな状態でも、清水の悪口なんて俺は聞きたくない。
「…飲み過ぎですよ、桜井先生。」
そう言って彼女が手に持つグラスを俺は、無理やりに取り上げた。
流れるスローなラテン系の音楽。
俺の冷えた指先が桜井先生の手に触れた瞬間、彼女は顔を俯かせた。
そして上目がちに俺を見上げながら、手の平を胸の上で固く握り締めて。
「…私、岡部先生しか頼れる方が居なくて…」
「―――ッ!」
アルコールの所為なのか赤く染まった頬に、潤んだ瞳。
胸の上で握り締めていた桜井先生の手は、心なしか震えているようにも見えて。
そう話しながら桜井先生は、洒落た居酒屋で透明な色を口に含む。
その姿を横目に見ながら俺は、
焼酎をロックで飲む彼女に愛想笑いを向けた。
まぁ、見るからに“お嬢さん”な桜井先生が、
うちの学校に慣れるには、時間が掛かるのだろうけど。
「…私、正直言って先生のクラスの清水さん、苦手なんです。」
こんなところで聞きたくない名前に、ため息を混じらせた。
思い出したくないってのに、ずっと頭の中にはアイツが居て。
「それに、うちのクラスの白石くんも。」
酔っ払っているのか桜井先生は、
相槌を打つ俺にそう付け加えながら言葉ばかりを投げて。
こんなところでも、清水と白石、か。
まぁ、あの二人はうちの学年で問題児ツートップだしね。
「…清水さんだって、真面目に授業を受けてるのかと思ったら、私の話に聞く耳持とうともしないし。
きっと、家庭環境や友人関係が悪いに決まってます。」
いや、アンタは性格が悪いよ。
そう言いたかったが、言葉を飲み込んだ。
こんな状態でも、清水の悪口なんて俺は聞きたくない。
「…飲み過ぎですよ、桜井先生。」
そう言って彼女が手に持つグラスを俺は、無理やりに取り上げた。
流れるスローなラテン系の音楽。
俺の冷えた指先が桜井先生の手に触れた瞬間、彼女は顔を俯かせた。
そして上目がちに俺を見上げながら、手の平を胸の上で固く握り締めて。
「…私、岡部先生しか頼れる方が居なくて…」
「―――ッ!」
アルコールの所為なのか赤く染まった頬に、潤んだ瞳。
胸の上で握り締めていた桜井先生の手は、心なしか震えているようにも見えて。