《短編》空を泳ぐ魚2
考えてもみれば、何で俺は、女一人に執着していたんだろう。


ガキの、しかも生徒の女なんかに。


初めは、その外見に目を引かれただけだった。


抱くようになってからは、俺だけのものを誰にも取られたくなかった。


付き合うことでそれが出来るなら、何でも良かったのに。


俺の手をすり抜けるから、必死でたぐり寄せようと懸命で。


気付けば、自由で奔放で、そしてホントは弱いアイツのことが、

気掛かりで仕方が無くなっていただけだ。


“馬鹿”とか“キモい”とか言われ続けてて忘れてたけど、

俺だって学生時代は、それなりにモテてたんだ。


毎日毎日ダサいだけのスーツに身を包んで無理やりに笑顔作ってるけど、

ホントの俺は、こんなんじゃないはずなんだ。


一人の女に執着するようなヤツじゃないはずなんだ。






あれから、日々だけが無情に過ぎて。


いつの間にか白石は、謹慎期間も終わっていて。


金髪頭と女王様は、前にも増して生徒に注目されるようになっていた。


見たくないのに、嫌でも目に入って。


気にしたくもないのに、寂しそうなその横顔が気になって。


男が居るなら、もっと嬉しそうな顔しろよ。


じゃなきゃ俺は、未だにお前との日々を思い出してしまうんだ。


秋が深まり、少しだけ冬に近づいて。


何て言葉を掛ければ良いかもわからず俺は、

話しかけることさえ出来なくて。


俺が空を見上げることは、なくなっていた。


見たってどーせ、魚の形なんて見つからなかったから。


そんなものが見つかったって、もぉどうすることも出来ないんだから。



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