《短編》空を泳ぐ魚2
「…そーいや、セナちゃんも元気ないよね?」


「良いよ、あたしのことは。」


いつもと違う道を、タクちんと歩いてるなんて。


何か、変な感じだ。



「あっ、そこのコンビニ寄らない?
んで?誠、何があったの?」


タクシーが一台だけ止まってる、寂しすぎるコンビニ。


タクちんが指す方向に一緒に向かい、少し肌寒くなった夜風に身を縮めた。



「…誠、謹慎になったんだよ。」


「嘘?!」


「ホントだよ。
机投げてさぁ。」


言いながら、タクちんが先に店の中に入り、あたしもそれに続いた。



「マジで言ってんの~?!」


あたしの言葉に余程驚いたのだろうタクちんは、

店内に響き渡るほどの大声で。


ははっと笑いあたしは、商品を見るために目線を移した。



「―――ッ!」


その瞬間、目に映った光景に笑っていたはずの口元が引き攣り始めて。


会いたくなかった岡部と、そして何故か一緒に居る数学魔女。


足が止まり、そして思考さえも止まってしまって。



「…清水、さん…?」


その空気を打ち破ったのは、数学魔女のあたしの名前を呟く声だった。


戸惑うように岡部は、目線を泳がせていて。


まるで、見られたくなかったとでも言いたいのだろうか。



「えっ?
セナちゃん知り合い?」


横から声を掛けてきたタクちんの言葉も、まるで耳を通り過ぎて。


あたし、何でこんなに何も考えらえなくなってんの?


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