《短編》空を泳ぐ魚2
短くなった煙草を投げ捨て、足で消した。


だけど保健室にも、グラウンドにも行きたくなくて。


このまま帰ろうかと悩んでいた瞬間。



―ガチャッ…

「―――ッ!」


重たい扉が開けられる音が響いて。


居るはずのない岡部が、何故かそこに居て。



「探したぞ?」


低い声が聞かれ、そのまま岡部は扉を閉めてそれに背中を預けた。


唯一の出入り口を塞がれる格好になりあたしは、

逃げ場所を探すように視線を動かす。



「…保健室、行ったんじゃなかったのかよ。」


「…関係…ないから…」


遠くで聞こえる生徒達の声もまるで耳に入らないほどに、

この抜けるような青空に相応しくないほどに空気が張り詰めてるみたいで。



「…関係ねぇことねぇだろ?
嘘ついてサボって立入禁止の屋上に入って、その上煙草まで吸ってて。」


「―――ッ!」


「見逃せると思ってる?」


そう言って岡部は、体を反転させてあたしを壁に押し当てて。


睨むようなその瞳とこの体勢に、背筋に嫌な汗が流れるのを感じた。



「謹慎にでもなんでもすれば良いでしょ?!」


声を上げてその体を押そうとしても、ビクともしなくて。


逆に両手首を掴まれ、そして壁に押し当てられた。


苦痛に顔が歪んで。


数学魔女が居るんなら、もぉあたしなんかに用はないはずなのに。


何で今更、こんなことをされるのかわかんない。


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