《短編》空を泳ぐ魚2
Ⅷ
「…あの、昨日はすいませんでした…」
そう小声で、桜井先生は俺に向けた。
「いえ、僕の方こそすいませんでした。」
笑顔でそれだけ言い、何か言われるより先に教科書を持って立ち上がった。
この女さえ居なきゃ、俺はアイツを捕まえることが出来てたかもしれないのに。
だけどもぉ、何を言っても後の祭りなのだろう。
俺がどう思おうと、清水にはあの男が居るんだから。
本当にもぉ、俺たちは終わってしまったのだろう。
そんな風に思わされる日々ばかりが過ぎて。
いつの間にか、体育祭になっていた。
若い教師連中は、どこまで行っても準備だの片づけだのでパシられて。
だけど、桜井先生と話さなくても良いのだと思うと、少しだけやる気にもなれた。
あんな女の機嫌を取る余裕なんて、今の俺にはないから。
いつも必ず、視線を向ければその先に清水が居て。
すぐに見つけてしまう自分が、嫌で嫌で堪らなかった。
午前中の玉入れにだけ出た清水は、
突っ立ってたかと思うと突然、玉を拾い放り投げて。
見事に入ったかと思えば、そのままカゴを見つめ続けていた。
その視線の先に、何を思っているのか。
そんなことばかり、考えてしまう。
「あら、岡部先生!
ちょうど良かったわ!」
俺を呼び止める声に顔を向けると、小走りな養護教諭のババアが近付いてきて。
太っているからなのか、息を切らしているのが笑える。
「…先生、清水さんのクラスの副担任でしたよねぇ?」
「えっ、それがどうかしましたか?」
そう言われてみれば、先ほどから清水の姿が見当たらない。
養護教諭から出た名前だけに、嫌な予感がして。
そう小声で、桜井先生は俺に向けた。
「いえ、僕の方こそすいませんでした。」
笑顔でそれだけ言い、何か言われるより先に教科書を持って立ち上がった。
この女さえ居なきゃ、俺はアイツを捕まえることが出来てたかもしれないのに。
だけどもぉ、何を言っても後の祭りなのだろう。
俺がどう思おうと、清水にはあの男が居るんだから。
本当にもぉ、俺たちは終わってしまったのだろう。
そんな風に思わされる日々ばかりが過ぎて。
いつの間にか、体育祭になっていた。
若い教師連中は、どこまで行っても準備だの片づけだのでパシられて。
だけど、桜井先生と話さなくても良いのだと思うと、少しだけやる気にもなれた。
あんな女の機嫌を取る余裕なんて、今の俺にはないから。
いつも必ず、視線を向ければその先に清水が居て。
すぐに見つけてしまう自分が、嫌で嫌で堪らなかった。
午前中の玉入れにだけ出た清水は、
突っ立ってたかと思うと突然、玉を拾い放り投げて。
見事に入ったかと思えば、そのままカゴを見つめ続けていた。
その視線の先に、何を思っているのか。
そんなことばかり、考えてしまう。
「あら、岡部先生!
ちょうど良かったわ!」
俺を呼び止める声に顔を向けると、小走りな養護教諭のババアが近付いてきて。
太っているからなのか、息を切らしているのが笑える。
「…先生、清水さんのクラスの副担任でしたよねぇ?」
「えっ、それがどうかしましたか?」
そう言われてみれば、先ほどから清水の姿が見当たらない。
養護教諭から出た名前だけに、嫌な予感がして。