《短編》空を泳ぐ魚2
「…実は…お話があって…」



勘弁してくれよ。


そう思い俺は、立ち上がってその傍まで向かう。



「…私の気持ち…もぉ気付いてますよね…?」


「―――ッ!」



その言葉を聞き俺は、小さくため息を零した。


こんなことになりたくないから俺は、この女を避け続けてたってのに。


伝えたいはずの清水は来なくて。


代わりに好かれたくもないこんな女に今、告白なんかされて。


世の中、上手くいかねぇように出来てんだな。



「キャッ!」


その瞬間、俺は桜井先生を壁に押し当てた。


か細い悲鳴を漏らした桜井先生は、戸惑うように俺を見上げて。



「…どどのつまり、アンタ俺とこーゆーことしたいんでしょ?」


「―――ッ!」


顔を近づけ不敵に唇の端を上げる俺を、

まるで桜井先生は別人でも見るような目で驚く。



「…岡部…先生…?」


戸惑うように俺の名前を呼ぶ声は、清水なんかとは全然違って。


とても醜く耳に響く。



―ガラガラ…

「―――ッ!」


瞬間、空気どころか心臓さえも止まったのかと思うほどで。


ゆっくりと俺は、恐る恐る後ろを振り返る。



「―――ッ!」


瞬間、清水の姿に唇を噛み締めた。


こんな光景を見られては、“好きだ”と告げることさえ出来なくて。


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