《短編》空を泳ぐ魚2
どれほどの時間、あたしは屋上に居たのだろう。


アイツのところになんか、行きたくもなかった。


行けば、もぉこんな風にされないのだろうけど。


嘘ばかりつくアイツの言葉なんか、信じることさえ出来なくて。


虚しく時間ばかりが過ぎる。



―ブィーン、ブィーン…

体操服のお尻のポケットに入れておいた携帯が、着信のマナーを鳴らす。


気付けばもぉ、太陽さえも低く校舎の影を伸ばしていて。



着信:誠


―ピッ

「セナ、どこに居るんだよ?!
もうすぐ閉会式始まるぞ?」


もうそんな時間なのかとあたしは、ため息を混じらせた。



「…ごめん、すぐに戻るから。」


それだけ言い、電話を切った。


そして動かなくなっていた体を無理やりに起こし、屋上から出た。


相変わらずの静まり返った校舎は、ひんやりとした空気さえ漂っていて。


体育祭も終われば、本格的に冬に近づくのだろう。




「セナ、どこに消えてたんだよ?」


そう言ってトボトボと歩くあたしに、誠が小走りに口を尖らせて近づいてきた。



「…うん、ちょっとね…」


「つーか、顔色マジでヤバくね?」


“大丈夫かよ?”と誠は、言葉を濁すあたしを心配そうに見つめて。



「大丈夫だってば!」


無理やりに笑顔を作って向け、自分のクラスの列の最後尾に並ぶ。


岡部の方なんか、見ることもしたくなかった。


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