《短編》空を泳ぐ魚2
逃げたくなって瞬間、田口に背中を向けた。
だけど田口は、あたしの腕を掴んで。
「何で逃げるんだよ?!
僕はこんなに好きなのに、何で逃げるんだよ?!」
「―――ッ!」
恐る恐る顔を向けると、田口は瞳孔が開いたような瞳をあたしに向けて。
その瞬間、恐怖が走る。
「…ちょっ、やめてよ…」
そう震えながら言うあたしの腕を握り締める田口の手に、
苦痛に顔が歪むほどに力が込められて。
「嫌!離してッ!!」
「うるさい!!」
何であたしばかり、こんな目に遭うんだろう。
みんなの迷惑にならないように生きてきたじゃない。
あたしなんて、放っといてくれれば良いじゃない。
「優しくしたんだから、君だって僕のことを好きになったはずだろ?!」
自分勝手な理屈を叫びながら田口は、
抵抗するあたしの腕を引き寄せようと力を入れ続けて。
逃げられるなら、腕が取れたって良いと思った。
「…痛ッ…助けて…」
痛みとか、恐怖とか。
混じり合う全てのものに体が震えて。
誰かに助けて欲しかった。
ずっとずっと、そう思っていたんだ。
ちっぽけなだけの人間のあたしを、
こんなにも無力なあたしを、誰かに見つけて欲しかった。
見つけ出して、そして助けて欲しかった。
だけど田口は、あたしの腕を掴んで。
「何で逃げるんだよ?!
僕はこんなに好きなのに、何で逃げるんだよ?!」
「―――ッ!」
恐る恐る顔を向けると、田口は瞳孔が開いたような瞳をあたしに向けて。
その瞬間、恐怖が走る。
「…ちょっ、やめてよ…」
そう震えながら言うあたしの腕を握り締める田口の手に、
苦痛に顔が歪むほどに力が込められて。
「嫌!離してッ!!」
「うるさい!!」
何であたしばかり、こんな目に遭うんだろう。
みんなの迷惑にならないように生きてきたじゃない。
あたしなんて、放っといてくれれば良いじゃない。
「優しくしたんだから、君だって僕のことを好きになったはずだろ?!」
自分勝手な理屈を叫びながら田口は、
抵抗するあたしの腕を引き寄せようと力を入れ続けて。
逃げられるなら、腕が取れたって良いと思った。
「…痛ッ…助けて…」
痛みとか、恐怖とか。
混じり合う全てのものに体が震えて。
誰かに助けて欲しかった。
ずっとずっと、そう思っていたんだ。
ちっぽけなだけの人間のあたしを、
こんなにも無力なあたしを、誰かに見つけて欲しかった。
見つけ出して、そして助けて欲しかった。